共有名義の不動産は売れる?兄弟で相続した実家の「持分」問題と解消方法を解説

「兄弟3人で実家を相続したが、誰も住んでいない」「売りたいのに、兄が首を縦に振らない」「連絡の取れない親族が共有者に入っている」——共有名義の不動産をめぐるご相談は、当社にも数多く寄せられます。

不動産の共有は、相続の場面で「とりあえず法定相続分で分けておこう」という形で発生することがほとんどです。その時点では公平に思えるのですが、共有名義は時間が経つほど厄介になっていく、いわば時限爆弾のような状態です。

本記事では、共有名義の不動産がなぜ動かせなくなるのか、2023年の民法改正で何が変わったのか、そして共有状態を解消する方法について解説します。


なぜ「共有名義」になってしまうのか

不動産が共有名義になる主なきっかけは、次の3つです。

  • 相続:相続人が複数いて、遺産分割協議をせずに法定相続分どおり登記した/実家を分けようがなく共有にした
  • 夫婦での購入:ペアローンや共同出資で購入し、出資比率に応じて持分を設定した
  • 親子での購入:資金援助を受け、親子で持分を持ち合った

このうち最も多く、そして最もこじれやすいのが相続による共有です。「今すぐ結論を出さなくてもいいから、とりあえず共有で」という判断が、後々の身動きの取れなさにつながります。


共有名義の最大の問題 — 「一人では何もできない」

共有不動産に対して行える行為は、民法上、次の3つに分類され、それぞれ必要な同意の要件が異なります。

行為の種類具体例必要な同意
保存行為修繕、不法占拠者への明渡し請求共有者が単独でできる
管理行為賃貸借契約(短期)、軽微な変更(改良)持分の価格の過半数
変更行為(処分)売却、建替え、抵当権の設定共有者全員の同意

つまり、不動産そのものを売却するには、共有者全員の同意が必要です。持分の多い少ないは関係ありません。持分がわずか10分の1の共有者であっても、反対すれば売却は成立しないのです。

「兄弟の一人が売却に反対している」「感情的な対立があって話し合いにならない」——こうした状況になると、資産価値のある不動産が、誰も活用できないまま固定資産税だけを生み続けることになります。


時間が経つほど深刻化する「共有者の増殖」

共有名義の本当の恐ろしさは、放置している間に共有者が増えていくことにあります。

たとえば、兄弟3人で相続した実家。そのまま何十年も放置していると、兄弟が亡くなるたびに、その配偶者や子ども(甥・姪)へと持分が相続されていきます。当初3人だった共有者が、気づけば10人、20人に膨れ上がる——これが「数次相続」です。

こうなると、

  • 全員の連絡先を把握することすら難しい
  • 一度も会ったことのない親族と交渉しなければならない
  • 共有者の中に認知症の方が出てきて、協議自体ができなくなる
  • 所在不明の共有者が現れる

といった事態に陥り、事実上、その不動産は永久に売れなくなります。

なお、相続登記は2024年4月から義務化され、過去分の相続についても2027年3月31日が期限となっています。共有状態を整理するうえでも、まずは登記を正すことが出発点になります。


【2023年4月民法改正】共有のルールが変わりました

こうした問題に対応するため、2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法で、共有に関するルールが大きく整備されました。押さえておきたいポイントは3つです。

1. 「軽微な変更」は過半数でできるように

従来、共有物に変更を加えるには全員の同意が必要と解釈されがちでしたが、改正により、形状や効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」(改良行為など)は、持分の価格の過半数で決められることが明確になりました。

たとえば、共有する建物の外壁の修繕や、砂利道のアスファルト舗装などが該当します。ただし、売却そのものは引き続き全員の同意が必要です。

2. 所在不明の共有者がいても手続きが進められるように

改正の目玉といえるのが、所在等不明共有者(誰が共有者かわからない、または所在がわからない共有者)への対応制度です。裁判所の手続きを経ることで、次のことが可能になりました。

  • 持分の取得:他の共有者が、所在等不明共有者の持分を取得できる(民法262条の2)
  • 持分の譲渡権限の付与:所在等不明共有者の持分を含めて、不動産全体を第三者に売却できる(民法262条の3)
  • 変更・管理の決定:所在等不明共有者を除いた共有者で、変更や管理を決められる

これにより、「行方不明の親族がいるから何もできない」という状況に、ようやく出口ができました。

ただし注意点があります。相続によって共有になった不動産の場合、この持分取得・譲渡の制度は、相続開始から10年を経過していなければ利用できません。また、裁判所への申立てや公告など、相応の手続き・時間・費用が必要です。「制度ができたから簡単に解決する」というものではない点はご理解ください。

3. 共有物分割のルールが明文化

裁判で共有関係を解消する「共有物分割請求」についても、判例上のルールが条文として整理されました(民法258条)。


共有状態を解消する4つの方法

共有のままでは動かせない不動産も、次のような方法で解消できます。

① 共有者全員で不動産全体を売却する

最も高く売れる、理想的な方法です。第三者から見れば通常の不動産と変わらないため、市場価格で売却でき、代金を持分に応じて分けられます。全員の合意が得られるなら、まずこれを目指すべきです。

② 他の共有者の持分を買い取る(または売る)

「自分がこの家に住み続けたい」という共有者がいる場合、その方が他の共有者の持分を買い取って単独所有にする方法です。逆に、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうこともできます。

③ 共有物分割請求

話し合いがまとまらない場合、共有者はいつでも共有物分割を請求できます。協議 → 調停 → 訴訟という流れで進み、裁判所は次のいずれかの方法で分割を命じます。

  • 現物分割:土地を物理的に分ける
  • 代償分割(全面的価格賠償):一人が取得し、他の共有者にお金を払う
  • 換価分割:競売にかけて代金を分ける

ただし、裁判は時間も費用もかかり、親族関係が決定的に壊れることも少なくありません。また、換価分割で競売になれば、市場価格より安くなってしまいます。最後の手段と考えるべきでしょう。

④ 自分の持分だけを売却する

意外に思われるかもしれませんが、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしに、単独で売却できます。これは法律上の権利であり、誰にも止められません。

とはいえ、持分だけを買ってくれる一般の買主はまずいません。買ったところで、その不動産を自由に使うことも売ることもできないからです。そのため、持分の売却先は、訳あり物件を扱う専門の買取業者が中心となり、価格も持分割合どおりにはならず、相応に低くなるのが一般的です。

なお、持分を第三者に売却すると、残された共有者は見ず知らずの業者と共有関係になります。関係が決定的に悪化するリスクがあるため、可能な限り、まずは共有者間での話し合いを尽くすことをおすすめします。


「共有のまま放置」が一番損をする

共有名義の不動産で、最も避けるべき選択は「とりあえず先送り」です。

  • 話し合える相手がいるうちに話す
  • 判断能力があるうちに決める
  • 共有者が増える前に整理する

この3つを守れるかどうかで、最終的に手元に残る金額は大きく変わります。時間が経てば経つほど、選択肢は減り、費用は増え、感情のもつれは深まります。

「まだ揉めていないから大丈夫」ではなく、揉めていない今だからこそ、動くべきなのです。


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※本記事は2026年7月時点の情報にもとづく一般的な解説です。個別の法的判断については、弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。

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